「このクリブスの初回限定生産にはDVDもついてんだってさ」
「へー」
「それで2300円だってさ。安いよね」
「ライブより安い」
「赤坂ブリッツでライブだってさ。インフォメーションみたいだね、これ。ハハハ!」
「あのね。赤坂ブリッツであれ見たことある」
「スウェードでしょ。良かったよね」
「2日連続で見たの」
「今はなきスウェードね」
「そう」
「このひとたちかなりね、スペシャルな能力持ってると思うんだよ。星の数ほどロックバンドあるけど、その中でも、音の鳴らし方、メンバーの結びつき方とかがほんと特別だと思うんだけどさ。このニュー・アルバムはそういう力がどう発揮されてるかっていうのを知りたいのでね、そこらへんをRに説明してもらえたらな思いまして」
「……そんないきなり核心的なことから聞かれてもねえ」
「ああ、そう。じゃあ、いいわ。もっと、やわいとこからいってみる。すごいメロディがいいバンドなんですよ。でもなんかね、俺個人的なんだけど、フルで聴いたときにすっごいいいのと、今ひとつメロディは良いけどパンチに欠けるというのがあって、今回のニュー・アルバムはそこらへんどうかなと思って」
「それは変わんないと思う」
「いままでと変わんないんだ。全編ガッチリ、バッチリOK! みたいな感じじゃないんだ?」
「べつにそんなふうに作っているつもりじゃないと感じるから。まあ、そういうふうに作れればいいにこしたことないだろうけどさ」
「うん」
「日記書くようなものかな」
「ああー」
「自分たちのすべてを記録しておきたいだけというようなことだと思うから」
「日記書くようにあんな素晴らしい曲の数々を作るなんてな…。やっぱこのひとたちはすごいなあ」
「でも日記書くようなってのはわかるよ。演奏する姿見ててもさ、ホントいい意味で遊んでるように音楽をつむぎだしている感じがあって、そこが見てても大好きなんだけど」
「それがこの後ろのライブラリーみたいなのに表れているんだよ」
「はあ、なるほど。で、このアルバムでは、その遊んでいる感じが、今回はどんなふうに表現されてるのかなって気になるところなんだけどね」
「遊んでいる感じ?」
「うん」
「う〜ん、遊んでいる感じっていうか、無意識なところで赤裸々にやろうとしてるんだと思うな」
「ほお…。でも、そんなような話はさっきも聞いたんだけど」
「あのさ“いわゆる”っていうっていうものをはずそうとしているんだよ、きっと。誰だってみんなほっとくといわゆるロックをやってしまうわけ」
「このひとたちであろうとも」
「うん。きっと誰でもね。耳に染み付いているから」
「ふーん」
「ロックってものが」
「ええ」
「でも、そういうの全部既成概念はずした、ほんとに自分たちのロック、もしくはロックなんて型じゃなくてもいいから自分たちの形のようなものを作ってみたいと思っているんじゃないのかな」
「ああー。いわゆるロックみたいなところで視点をあわしているわけじゃないんだな」
「うん」
「もっと志高いんだね」
「ま、そこまで言葉で思ってない感じするけど。実際やろうとしてることはそんなようなことだと感じる」
「うーん。わかるな」
「だからそういうヘボいとか思われる曲もいっぱい入ってるんだと思うよ」
「なるほどね」
「じゃあ、これね2nd。どう?」

The New Fellas
「うん。なんか、…素人くさいね」
「素人くさい。じゃあ、このひとたちは1枚1枚成長してんだね」
「…そうだね。1枚1枚っていうか、今回で成長したんじゃないのかな」
「あ、そう。
これ1st」

The Cribs
「こっちのほうがマシだと思うな(2ndより)」
「じゃあ、今度はちょっとこっち見てよ」

メンズ・ニーズ、ウィメンズ・ニーズ、ホワットエヴァー
「これが前回のアルバムなんですよ。よく見てくださいよ」
「なんだか今回のに比べてパッとしないね。それに3枚の中でも一番パッとしない感じだね。洗練はされた感じはするけどね」
「そう? フランツフェルディナンドのボーカルのひとがプロデュースしてんだよ」
「へええ」
「いいアルバムだよ。3rdなんだ。このJKと最新作を見比べてなんか大きく変わったところがあるんじゃないですかね」
「すごい変わったと思うよ」
「すごい変わった?」
「うん。かなり進化したと思う」
「進化した」
「方向性がいっぱいできたと思う」
「フンフンフン。その要因となったものはわかりますかね」
「やっぱりいっぱいいろいろ実験したからじゃないかな」
「実験した? 3rdアルバムでも彼らはすでにいっぱい実験みたいなことしてたと思うんだけど」
「今回はもう、そういう自分たちに飽き飽きしたんだと思う」
「なるほど。それで今回のニュー・アルバムでは実験の質が変わったわけだ」
「実験の質っていうか、そういういろいろな実験して飽き飽きして、それよりももうちょっとグレードの高いところに目を向けなきゃダメだっていうことに気がついたの、と、思う」
「なるほどねー」
「グレードが5まであったとしたら、3くらいのグレードのもの延々作っているうちには3が5だと思って、そのうえに5があることに気づいてなかったんだよ。でも何かのきっかけでグレード5のものが出来た時に初めて、あっ、あのときは3だったなと思ったと思うわけ」
「なるほどねー。じゃあ前のアルバムの印象で聴くと、今回彼らのまたちがった感じが楽しめると」
「今回のほうが断然良いと思う」
「彼らは今回、人間関係性においてすごく変化があったんですけど。実は」
「へー、じゃあそれもいいふうに働いたんだね。誰かぬけたの?」
「いや、逆」
「じゃあ、そのひとの影響大きいのかもね」
「そのひとの影響大きい?」
「いや、こんなにも変わっているんだったら、きっとそのひとの影響もあるんじゃないかなと」
「あー、そこね、ちょっと下世話な感じで聞きたいんだけどさ。そのひとの影響がどんなものだったかとか。ま、そこまではわからないですかね」
「ドライになった感じがする」
「ドライになった? ふーん」
「ドライになったと思う」
「バンド自体が」
「うん。自分たちの創作物とか音ってものに対して、ドライに、み、見ることが出来て、」
「それが更なる成長につながったと」
「ええ。はい」
「そうなんですよ。実はね、ひとりすごい伝説的なギタリスト、ザ・スミスっていうバンドにいた、ジョニー・マーというひとが入ったんだよね」
「ふ〜ん」
「…Rにとっては、そんなことはどうでもいいと」
「それで、ドライになったわけなのかな?」
「うんうん。なるほどねー。やっぱジョニー・マーの参加は大きく影響したんだな、と」
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最近、俺はi podにペイヴメントの「クールキッド・レイン」のデラックス版を入れて毎日出勤途中に聴いている。
散々聴いて聴き飽きたはずなのに、数年ぶりに聴くと再び新鮮で、メロディやギター・フレーズの組み立て方がグッとくる。
スティーヴ・マルクマスのヴォーカルも味があっていい。
ペイヴメントは渋谷のクアトロでライブも見た。
ローファイな感じはそのままに、演奏は分厚くタイトで、音楽へのマジな愛を感じたのを覚えている。
俺のフェイバリット・ライブだ。
新作が出ないのが残念でしょうがない。
90年代を象徴するバンドだったのにニルヴァーナやオアシスのように物真似バンドもなかなか見当たらず替えの効かないバンドだったのだなと思う。
そういう意味でクリブスは絶品だ。
クリブスにペイヴメントの最良の遺伝子を感じている俺は、
クリブスの新作を聴けるという幸せを噛みしめている。
おまけにペイヴメントにはない2000年代バンドらしいヌケのよさもあって、ノスタルジーではなく、音楽の未来を感じて好きだ。



